子育ては喜びに満ちた経験でありながら、同時に多くの挑戦を伴うものです。
障害をもつお子さんの発達を支援する「療育」は、そうした挑戦に向き合うための重要な手段となります。
ご家族の皆様にとって役立つ情報が詰まっていますので、ぜひご一読ください。
1. 療育とは?

療育は、障害のある子どもの発達を支援し、自立した生活を送るための取り組みです。
療育は医療行為を必要としない場合もありますが、もともとは肢体不自由児の社会的自立を目指して「医療」と「教育」を並行して進める方法を指していました。
現在、厚生労働省はさまざまな障害を持つ子どもを対象にして「児童発達支援」という言葉を使用しています。
児童発達支援では、福祉的、心理的、教育的、医療的な援助を提供し、身体的・精神的な機能の適正な発達を促し、日常生活や社会生活をスムーズに行えるようにします。
療育の目的は、障害を持つ子どもが障害や特性を抱えながらも社会生活を送れるようにサポートすることです。
療育では、健常児とは異なる生活を目指すのではなく、障害や特性を上手に社会生活に組み込む能力を身につけることが目指されています。
療育では、以下の点に重点を置いてサポートを行います。
子どもの気持ちに寄り添ったアプローチ
- 子どもの感情やニーズを尊重し、子どものペースに合わせた援助を提供します。
困難への対処法の学習
- 困難な状況にどのように対処したり回避したりするかについて教え、自己解決能力を高めます。
新たなアプローチの考え方
- 困難を克服できない場合には、異なるアプローチを考えることで子どもの成長を促します。
療育は、生活能力の向上や学習のサポートを目指し、専門職である保育士などが児童発達支援事業所やセンターに所属して関与します。
保育士は、基本動作の指導や集団生活への適応支援を行います。
療育の目的は、障害児が自立した生活を送ることができるようにするために、さまざまな支援を行うことです。
2. 療育の対象と目的

療育の対象
療育の対象は、年齢制限はありませんが、障害をもつ子どもです。
療育は、発達障害や身体障害をもつ子どもなど、さまざまな特性をもつ子どもに対して行われます。
個別療育と集団療育の2つの形態があり、お子さんの発達に応じて適切な療育を選択することができます。
療育の目的
療育の目的は、子どもが自身の障害や特性と上手に付き合いながら、社会生活を送ることができるように支援することです。
特に目に見えにくい障害をもつ子どもたちは、生きづらさを感じることが多いです。
療育では、子どもの気持ちに寄り添いながら、困難に立ち向かう方法や回避する方法を教えます。
また、療育の目的は単にできないことを克服するだけでなく、違ったアプローチを考えることや回避する方法を見つけるための考え方も重要です。
療育の目的は以下のようにまとめることができます。
– 子どもが社会生活を送るための適応力を高めること
– 子どもの困難に寄り添い、上手に立ち向かう方法を教えること
– 子どもの特性や障害を理解し、適切な支援を行うこと
– 子どもが自己肯定感を持ち、自信を持って生活できるようにすること
療育の目的は、それぞれの子どもの特性に合わせて個別に設定されます。
子どもの成長や発達に応じて目標を見直し、適切な支援を行っていくことが重要です。
3. 療育の種類

療育には2つの主要な種類があります。
個別療育(1対1)と集団療育(1グループ2人~8人程度)です。
それぞれの療育は、お子さんの発達に必要な支援を提供します。
個別療育
個別療育は、お子さんとスタッフが1対1で行われる療育です。
この療育は、集団での療育が苦手な子どもや、1人での療育が適しているケースで選択されます。
個別療育では、お子さんそれぞれの特性に合わせた支援が提供されます。
診断に基づき、ひとりひとりの発達状態を考慮した個別プログラムが組まれます。
個別療育の特徴
– 1対1のサポート
– お子さんの特性に合わせた支援
– 発達状態に合わせた個別プログラム
集団療育
集団療育は、2~10名程度の少人数のグループで行われる療育です。
この療育では、ゲームや遊びなどの活動を通じて集団の中でのルールやコミュニケーション力、社会性を身に付けることが目標とされます。
工作や実験、音楽遊び、公園遊びなど、様々な活動を通して友達との適切な距離感などを学びます。
集団療育は、社会的な自立を目指す子どもに適しています。
集団療育の特徴
– 少人数のグループで行われる
– ゲームや活動を通じてルールやコミュニケーション力を身に付ける
– 社会的な自立を目指す
個別療育と集団療育の選択は、お子さんの特性と療育の目的に応じて行われます。
療育の進め方や内容は、専門家や保護者との相談を通じて決定されます。
療育の種類は特定の療育施設や療育プログラムによって提供される場合もあります。
適切な療育の選択は、お子さんの発達と成長を効果的に促すために重要です。
4. 療育を受けるための手順

療育を受けるためには、以下の手順を踏んで進める必要があります。
相談する
まずは公的な機関や医療機関で相談をします。
子どもの発達障害の可能性や普段の行動、言動について気になることがあれば、子育て・発達支援室や療育センター、児童相談所、障害福祉課などで相談することができます。
公的な機関では、必要な検査や支援制度についての説明を受けることもできます。
また、医療機関を受診した場合も、必要な検査や支援に関する情報を提供してもらえるはずです。
お住まいの自治体に問い合わせることで、今後の流れを確認することができます。
発達検査を受ける
次に、子どもの発達検査を受ける必要があります。
発達検査は、年齢に応じた検査方法があります。
具体的には、新版K式発達検査、乳幼児精神発達診断法、日本版Bayley-III乳幼児発達検査などがあります。
発達障害の診断には複数回の診察や定期的な通院が必要な場合もありますので、予約が取れない場合には発達支援センターなどで情報収集をすることがおすすめです。
適切な療育施設を選ぶ
発達検査の結果や個々の状況に基づいて、適切な療育施設を選びます。
療育施設は行政が運営するものから民間のものまでさまざまです。
対象年齢やサービス内容も異なるため、ご自身やお子さんのニーズに合わせて選ぶことが重要です。
市区町村役所の福祉窓口で施設の紹介を受けることができますし、見学や体験も可能な施設もありますので、活用してみましょう。
受給者証の申請・交付
利用する施設によって交付される受給者証を申請します。
地域によって要件が異なるため、お住まいの自治体に確認してください。
申請には診断書の準備が必要な場合もあります。
審査が完了すると、受給者証が交付されます。
また、施設利用に際しては障害児支援利用計画案の提出が必要ですが、障害児相談支援事業所に依頼するか、自身で作成することも可能です。
利用開始
受給者証を手に入れたら、療育施設に受給者証を提示して利用契約を結びます。
利用契約を結んだら、受給者証に定められた範囲内でサービスを利用することができます。
療育を受ける手順は、子どもやご家族のニーズに合わせて進めていく必要があります。
公的な機関や医療機関の相談窓口を活用し、適切なサポートを受けながらスムーズに手続きを進めてください。
療育を受けることで、子どもの発達を促し、社会的な自立を支援することができます。
5. 療育の効果

療育にはさまざまな良い影響が期待されます。
適切な療育を受けることで、障害のある子どもは以下のような成長や変化を経験することができます。
1. 生活スキルの向上
療育によって、食事や排泄などの基本的な生活動作を自分で行えるようになります。
これにより、日常生活での自立性が高まり、自立した生活を送るために必要なスキルが向上します。
2. コミュニケーション能力の発達
療育の過程で、受け答えや挨拶などのコミュニケーションができるようになります。
また、他人の表情や感情を理解する力も身につきます。
適切なコミュニケーションができるようになることで、社会性の発達も進みます。
3. 感覚や運動の発達
療育は遊びを通じて行われるため、運動や感覚の発達を促す効果があります。
遊びの中でさまざまな刺激を受けることで、運動能力や感覚統合能力が向上し、身体の制御や協調性が増します。
4. 社会性の向上
療育では、ルールのある遊びを通じて社会性の発達を促すこともあります。
集団での遊びや交流を通じて、他人との関わり方や協力する力を育むことで、社会への適応能力が向上します。
5. 個別プログラムのカスタマイズ
療育では、一人ひとりの特性に合わせたプログラムが作られます。
子どもの得意なことを伸ばしたり、苦手なことを改善したりすることで、その子に適した学びや成長が促されます。
療育の効果はすぐに目に見えるものではありませんが、ゆっくりとした成長が期待されます。
長期間にわたって継続的な支援が必要ですが、適切なプログラムや指導のもとで取り組むことで、子どもの発達を促すことができます。
療育を受ける際には、成長の過程を理解し、時間をかけて取り組むことが重要です。
まとめ
療育は、障害のある子どもの発達を支援し、自立した生活を実現するための重要な取り組みです。
個別療育と集団療育という2つの主要な療育方法により、子どもの特性に合わせた適切な支援を提供しています。
療育を受ける手順は明確に定められており、公的機関や医療機関の協力のもと、子どもと家族のニーズに合わせて進めることができます。
療育を通して、子どもの生活スキルの向上、コミュニケーション能力の発達、感覚や運動の発達、社会性の向上など、さまざまな効果が期待されます。
療育は時間がかかる取り組みですが、長期的な支援を通して、子どもの発達を着実に促すことができます。
障害のある子どもの自立と社会参加を目指すためにも、療育の活用が重要であると言えるでしょう。